禁断の扉

 issuuにアップした「日本の意匠」という写真集に、ベルギーにお住まいの方からコメントをいただいた。そして「きっとあなたはこのウェブサイトを気に入ると思うよ」と、あるサイトをご紹介いただいた。


 おぉぉ‥‥しまった。ドップリ嵌まっちまった。決して見やすいサイトではないが、一気にすべての写真を見て回った。最近よく「廃虚マニア」なんて言葉を聞く。僕が知らないだけかも知れないが、昔はそんな言葉はなかった。きっとそーゆー人は以前からいたんだろうけど、それは極く個人的な趣味であって、他人とシェアできるような楽しみではなかったはずだ。

 子供の頃、家の近所の映画館が閉鎖された。僕らはフェンスを破り、裏口から建物に侵入しては、映写室に落ちていたフィルムや、放置してあったガメラのポスターなんかを持ち帰っては宝物にしていた。
 最初はお化け屋敷にでも行くような気分で侵入していたのだが、何度も足を運ぶうちに、その空間が好きになっている自分に気づいた。外と隔離された暗く空っぽな空間に「妙な興奮」を覚えたのだ。

 なぜかはわからないが、いつの頃からか僕はその高揚感を封印してしまった。インターネットの到来で、マニアな世界にも陽が当たる時代になった。で、ここ数年「廃虚マニア」と呼ばれる人達のサイトを見る事も何度かあったが、僕の心の奥にある「禁断の扉」が開かれるほどの高揚感を味わう事はなかった。

 しかし‥‥このベルギー人カメラマンのサイトには見事に開けられちまった。ちょっとわかってきた気がする。廃虚なら何でもいいワケじゃない。美しさが必要で、さらに重要なのは「かつてそこにいた人達」の顔が見え、声が響き、それらが勝手に自分の中で物語化されなきゃダメなんだ。

door.jpg

 僕も廃虚写真を撮ってみたくなったので、さっそくパチリ。はい。これはうちの玄関です。「禁断の扉」は意外と身近な場所に息を潜めていたのですな。嬉しいような、悲しいような‥‥

コメント

  1. 実は…廃虚写真、好きです。
    怖いけど、開かずにはいられない、まさに禁断の扉。
    実際に行くのはあまりに怖いけど、確かにただの廃虚ではなくて、物語が感じられる写真がいいですね。

    返信削除
  2. 【ちるにーさんへ】
    ナントちるにーさんが廃虚好きとは‥‥ちょっと意外でした(笑)
    僕はホント言うと、写真で見るより「現場に身を置きたい」派なんです。匂いとか、音とか、空気の湿り具合とか‥‥写真ではわからない要素がけっこう重要だったりします。ま、写真を見てそれらを想像するのもまた楽しいんですけど♪

    返信削除
  3. シュガールー2008年5月9日 12:38

    廃墟と聞いて思い出すのは
    ストーカーとパーマネント・バケーションと純。
    ぼくもよく廃墟に忍び込んで読書をしたり
    肉を焼いたりコーヒーを沸かしたり
    星を数えたり・・
    みんながディスコでフィーバーしてた頃
    ひとりで暗い青春を過ごしていました。
    放射能汚染はないと思うけど
    今思えば薬品とかアスベストとか
    けっこうヤバいところだよね

    返信削除
  4. 【シュガールーさんへ】
    ストーカー、パーマネント・バケーション、純、って映画か何かのタイトルですか?
    しかし、廃虚の中で本を読んだりお茶飲んだり食事したり‥‥って、フィーバーするよりよっぽど素敵です。
    たしかに、工場の跡地なんかにはよくわからない薬品が置き去りにされてたりしますよね。「この刺激臭は尋常じゃないぞ」みたいな(笑)笑い事じゃないんですけど‥‥

    返信削除
  5. シュガールー2008年5月9日 19:44

    刺激臭のないものが逆に恐いですよ
    水銀、ヒ素、カドミウム、クロムなどの重金属系や
    アスベストなどの発ガン物質とか
    地下室なんかだと二酸化炭素とか空気系も馬鹿にできないし
    汚染レベルの高い廃棄物などの不法投棄なども恐いですね
    いつの間にか臆病な中高年になってしまったんですね
    今はもっぱら山上や山小屋で読書やお茶をひとりで楽しんでます
    そういえばさっきニュースで誰かがイリジウムを川に捨てたとか・・
    廃墟ではないですが最近散歩コースの東山公園内も
    高濃度の鉛で汚染されていることが発覚して
    大規模に立ち入り禁止になっていてビビりました
    ちなみに
    ストーカー/タルコフスキーと
    パーマネント~/ジム・ジャームッシュ
    純/横山博人..ちょっとマイナーかな

    返信削除
  6. 【シュガールーさんへ】
    なるほど、恐ろしい物ほど存在感が薄いのかも知れませんね。放射能なんて無味無臭で目にも見えませんもんね。
    しっかしまぁ人間ってやつぁ仕方のない存在ですなぁ。
    ちなみにジム・ジャームッシュの名前だけ存じております(笑)

    返信削除

コメントを投稿