お墓で殺生(せっしょう)

 今日は絶好の「墓そうじ日和(びより)」だった。気温が高かったわりに湿度がそれほど高くなかったので、いい汗かきながらお墓そうじをして来た。久々だったのでお墓周辺には草が生えまくっていた。僕は信心深くもマメな性格でもないので、できることならメンテナンス・フリーのお墓にできないものかと、ご先祖様が気を悪くするような願望を持っている。

 しかし、いざ草むしりを始めてみると知らず知らず気分が乗ってきて、気がつくと無心に草をむしっていたりする。「たき火」や「草むしり」という作業は心の中から邪念を追い出す効果があるようだ。

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 だが恐ろしいことに、お墓という場所にはそんな僕の「無心の境地」をジャマする大敵がウヨウヨしている。やつらはまるで第二次大戦中、アメリカ軍のパイロット達から恐れられていた「ゼロ戦」のように、僕のおいしい血を狙って執拗(しつよう)に空中戦をしかけてくる。彼らにはアメもムチも通用しない。僕にできる事はと言えば、やつらに攻撃のスキを与えないよう一時も体の動きを止めないようにする事と、やつらが体に取り付いた瞬間に手のひら爆弾をお見舞いすることだけである。僕は「無心の境地」をエンジョイしながらも見事6機のゼロ・ファイターの撃墜に成功した。現時点で確認できている当方の被害はわずか1箇所に過ぎない。これなら我が方の圧倒的勝利を宣言してもよい成績なのではないかと今、勝利の美酒に酔いしれている。

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