「早春スケッチブック」の山崎努のセリフは、19歳の僕の脳ミソを容赦なくシェイクし、目から何十枚もの鱗を無理矢理引っ剥がした。当然当時の僕は鶴見辰吾の視点からそのドラマを観ていたが、気づけば既に山崎努や河原崎長一郎の年齢を超えている。あのドラマは僕に大きな影響を与えた特別な作品だが、もし今自分に思春期の子がいたら、僕は我が子にあれを見せたいと思うだろうか。
あれから40年。その後も事あるごとに山崎努のナイフのような言葉が蘇り、ありきたりな僕に斬りかかってくる。まるで呪いのように。けっきょく僕は山崎努にも河原崎長一郎にもなりきれない中途半端な人間のままこの歳になった。でもそれが自分。受け入れるとか受け入れないではなく、満足か不満かでもなく、確実に言えるのは、もし山田太一というシナリオライターの作品に出会っていなければ、僕はこんな思いを抱くことすらできなかっただろうということ。ありがとうございます。ご冥福をお祈りいたします。
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