Paterson(2016年/アメリカ、ドイツ、フランス)

アメリカのニュージャージー州パターソンという地味な町に住む、地味なバス運転手のパターソン氏は詩を書くのが趣味。つねにノートとボールペンを持ち歩き、思いついた詩を小まめに書き留めていた。年齢は30代前半ぐらいだろうか。専業主婦の奥さんと1頭のブルドッグと共に小さな一戸建てで質素な生活を送っている。

妻はかねがね夫の詩を高く評価していて「どこかに発表すべきだ」と繰り返し夫を説得したが、パターソン氏にはまったくその気がなかった。

ジム・ジャームッシュが監督したこの「Paterson」という作品では、些細な出来事はいくつか起こるが大事件は起こらない。が、ある日一大事が起きた。家を留守にしていた間に詩を書き留めていたノートを愛犬がビリビリに破ってしまったのだ。感情の起伏をほとんど見せないパターソン氏も、さすがにショックを受ける。

この作品を観ている最中、僕の頭の中にヴィヴィアン・マイヤー女史の影がチラチラし、パターソン氏の姿にうっすら重なって見えていた。彼女も自ら撮った膨大な量の写真を誰にも見せることなく、無名のまま生涯を終えた。

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