野火(1959年/日本)

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 第二次世界大戦で命を落とした日本兵は230万人。そしてその半数以上が餓死だったという。つまり彼らはみな極限状態の中で人生の最期を迎えた事になる。市川 崑が監督したこの作品は そんな彼らの最期を描いている。敵に銃を向ける事はおろか もしかしたら敵の姿を見る事さえ1度もなかったかもしれない兵士達が 日本から遠く離れた南の島のジャングルの中を右往左往する。極度の飢えと疲れは彼らの理性を無力化し 味方の兵の死体を「猿の肉」と称して食べるようになる。市川 崑はそんな惨状を 船越英二を主役に据える事で生々しくなり過ぎないタッチで描いていた。
 そういえば 塚本晋也がこの「野火」を再び映画化し 来年封切られる予定らしい。主人公は監督自身が演じるようだが 塚本版「野火」は間違いなく もっと生々しいタッチになるんだろうな。観てみたいような‥‥ちょっと怖いような‥‥。

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