核家族化に失敗した指たち

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 これは手袋ではない。靴下である。数年前に買ったものの滅多に履くことのなかった先割れスプーンのようなこの『5本指靴下』を、久しぶりに履いてみた。こうして真上からの写真を見ていると、自分が「ピグモン」(もしくは「ガラモン」)になったような気がしてくる。と言っても若い人にはわからないかもね。その前に「ウルトラQ」や「ウルトラマン」を観たことのない人にはピンと来ないだろうね。いや、観たことのある人でも「なんで?」と思うかもしれないね。「いや、なんとなくそう思っただけです」回りクドくてごめんなさい。

 もともとこれを買ったのは、健康に良いという評判を聞いたからだった。念のために言っておくが「水虫だったからではない」5本の指を別個のお部屋に入れてあげる事が、どう体に良いのかは忘れてしまったが「履いたり脱いだりがしにくい」という事だけは覚えていたので、今まで履かずにしまったままにしてあった。今日久しぶりに履いてみての感想は「やっぱり履きにくい」だった。足の指の感覚というのはどうしてこんなに鈍いのか「左の薬指が今どこでどんな状況になっているのか」という情報がまるで頭に伝わってこない。何食わぬ顔で中指と同じ部屋に入って行こうとしていたりする。もちろん他の指も同様だ。しっかり装着するまでに一分以上かかり、履いてみての感触はとても落ち着かないものだった。

 一生懸命「これは体に良いのだから」と自分に言い聞かせたのだが、自分を納得させるのは無理みたい。せっかく久しぶりに日の目を見たのに、残念ながらこの靴下はまた永い眠りにつく事になりそうだ。

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