吉田美奈子のあのアルバムたちが!

「そろそろ聴けるようになってたりしてね」と、たま〜に覗いてみては「やっぱダメか」を繰り返す何年かを経て、ついに Spotify で聴けるようになった吉田美奈子の2作品。1989年の「DARK CRYSTAL」と1990年の「gazer」。バブルの真っ只中にリリースされたバケモノアルバム。たしか創美企画というレーベルからリリースされたものだったと思う。

僕にとって吉田美奈子は最初、山下達郎の多くの曲で作詞とコーラスを担当しているニューミュージック、シティーポップ系の女性シンガーという認識に過ぎなかったが、1980年代に入ったころに「ファンクの女王」としての彼女を知ってドップリハマった。

その後、幻の自主制作 CD「BELLS」を挟み、一息置いて突如出現したのが「DARK CRYSTAL」だった。衝撃だった。たぶんフェアライトだったと思うが、当時最先端だったデジタルサンプラーを多用したソリッドにもほどがある尖りまくりの冷徹なバックトラック。そしてそこに幾重にも積み上げられた多重録音による彼女の1人コーラス。岡沢章のベースも渡嘉敷祐一のドラムも聞こえてこない。グルーヴというものを拒絶した彼女の姿がそこにあった。正直戸惑った。そして痺れた。続いて翌年リリースされたのが「gazer」。これによって彼女が神の領域に到達したことを確信した。

幸せなことに今ではファンク時代の「LIGHT'N UP」「MONSTER IN TOWN」「IN MOTION」も、それに続く「BELLS」も「DARK CRYSTAL」も「gazer」も Spotify で聴けるようになった。さっそく今「DARK CRYSTAL」を聴き返しているが、当時 CD で聴いた時とアレンジやミックスの異なる部分があるように感じる。思えば僕のリスニング環境もあの頃と全く違う。そのせいなのか、そうじゃないのか。とにかく嬉しい。

聴きたくても音源が手に入らず悶絶していた海外のファン達も、ようやくこれで大手を振って彼女のあの時期の作品を味わうことができるようになったわけだ。音楽のサブスク配信には賛否があることも承知しているし、ミュージシャンに還元されるお金の問題についても課題は残っているとは思うが、無責任な外野の意見としては、音楽なんてもんは聴きたいと思っている人の耳に届いてなんぼ、楽しませてなんぼ‥‥だと僕は思う。

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