やっと手にした「龍潭譚(りゅうたんだん)」。出たばかりの本なのに「やっと」はおかしいと思われるかも知れませんが、金沢の泉鏡花記念館でオリジナルの現物を目にしてから12年。手にできる日は来ないかもと思いつつ待っていたのです。「絵本化鳥」も「朱日記」も「榲桲に目鼻のつく話」も出版と同時に購入してきましたが、この「龍潭譚」だけはずっと幻の本だったわけです。
実はこの本のオリジナルは錫(すず)箔に包まれた超豪華(というか、金属の外皮を持つ書籍なんて「ちょっとどうかしちゃってる」としか思えないヘンタイっぷりなんですが)な装丁の自主制作本で、1冊3万円(200部限定)というプレミアムにもほどがある書籍だったんです。
で、2011年に出版されたその幻の「繪草紙 龍潭譚」の2023年版が今回購入した「絵本 龍潭譚」なんです。題名が「繪草紙」から「絵本」に変わっただけでなく、本のサイズは手にしやすく読みやすい大きさに変更され、表紙の素材も金属から紙に、そして文章のフォントや配置などにもおそらく細かいチューニングが施されていると思われます。
いやぁ〜 やっと手にすることができました。素晴らしい内容です。中川学さんのイラストレーション、泉屋宏樹さんの装丁デザイン、上田晋さんの題字、才気溢れるクリエイターたちの鉄壁のチームワークが、決してとっつきやすいとは言えない泉鏡花の世界を、ほどよい距離にまでグッと引き寄せてくれます。
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