タヒチの思い出


23年前、タヒチに旅した時のこと。滞在していたボラボラ島のホテルでカヌーを借り、意気揚々と漕ぎ出したはいいが 潮に流され漕いでも漕いでも岸に戻れなくなった。ちょうどマティラ岬の突端まで流された所で 陸の方角から「日本人ですかー?」という声が聞こえた。声のした崖のあたりを見上げると東洋人の青年が1人立っていた。

「日本人ですー!」と叫ぶと「僕も日本人でーす」と返ってきた。「潮に流されて戻れなくなっちゃいましたー!」と言うと「そこは潮の流れが速いから気をつけてー」と返事が。いやいや「気をつけて」も何も「現にいま遭難しかかってるんですけど」顔を引きつらせながら心の中で叫ぶ僕。

すると青年は「舟から下りて押して帰った方がいいかも知れませんよー」と‥‥ ん??? 彼のアドバイスに従い恐る恐る舟を下りると‥‥完全にパニックになっていて気づかなかったが、水位は膝ほどしかなかった。

命の恩人の彼、今頃どこでどんな生活を送っておられるのやら。
 

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