トリガーのデジタル化

 僕はかつて「形の無いものより有るものを優先する人間」だった。例えば 好きなミュージシャンのコンサートに行くより その人のレコードを手に入れる方を選んだし 旅に出たり美味しいものを食べるより クルマやオーディオや楽器を買った。

 しかし この数年でその優先順位がコロッと逆転した。形ある物は たとえ自分がこの世から消えても 後に残ってしまう。そしてこの「残す」という事への嫌悪が日に日に強くなっているのだ。これはもう自分でもビックリするほどに。

 あんなにせっせと買い漁ったレコード エアチェックに精を出したカセットテープ 闇雲に撮りまくったネガやポジフィルム 今やそれらが重荷になりつつある。勿論それらに対する思い入れは今でも持ち続けているが 思いは自分の頭の中にあるのであって 物はトリガーに過ぎない。つまりそのトリガーが物理的空間を占拠している事に意義を感じなくなって来たのだろう。

 もし このアナログなトリガーをすべてデジタルに変換できれば きっと僕はこの重荷から解放されるだろう。勿論その過程で「大切な何か」が失われる可能性がある事も僕は知っている。しかし それと引き替えに手に入るであろう清々しさの方に 今の僕は強い魅力を感じている。

  

 しかしだ まずは物を減らすために必要な道具を手に入れなければならない という矛盾にぶち当たるのである。

コメント

  1. ぼくは80年初頭にそれをやって
    レコードも単車もファッションもアパートも全部捨てました。
    公園で寝泊まりして金山のダイエーのゴミ山が台所でした。
    そこでいろんなことを知ったけど
    その後、カムバックし失ったものをもう一度取り戻すのに
    ずいぶん時間がかかりました。

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  2. 【シュガールーさんへ】
    もしかして僕がルーさんと出会ったのはカムバック直後の事だったんですかね?
    さすがに僕はそこまでしようとは思いませんが「できるだけ夜逃げしやすい生活様式を確立したいなぁ」とは思っています(笑)

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  3. ああ。懐かしいですね。
    生意気でいつも傷だらけで頭でっかちなぼくが
    まともな人たちにやっと仲間入りして
    第一歩を踏み出したところですね。
    思えばあそこからキャリアがスタートしているので。
    ひげさんは人生の先輩ですよ。

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  4. 【シュガールーさんへ】
    いえいえ
    職場ではちょっとだけ先輩だったかも知れませんが
    人生においてはぜんぜん後輩です!
    しかしあれですね。
    一見「まともな人」に見えても 1人1人をよーっく見てみると「1人残らず変だ」という事に気づきますね。要するにその「変」な部分が表面に露呈してるかしてないかの違いしかないんじゃないですかねぇ。ちなみに 当時のルーさんは比較的わかりやすい形で露呈してました(笑)

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