音楽への想い

　起き抜け（昼近くだけど）の電話に出ると「あ、ミスター・フレディー？」の声。僕に電話してきて、まずこう問いかけるのは彼だけだ。「あ、小向君？」「そうそう。いま近くまで来てるんだけど‥‥」と言うので、駅前のコメダ（喫茶店）で会った。

　前回会ったのは確かFredio収録の時だから‥‥２年半ぶりか。やっぱり僕らが顔を合わせると音楽の話になる。アリフ・マーディン、フィル・ラモーン、スティーヴ・ガッド、アンソニー・ジャクソン‥‥なんて名前を耳にし、口にしたのは何年ぶりだろう‥‥「あんな音を作りたいんだ」と彼は言った。商業音楽が質的な意味での円熟の極みに達した頃の音だ。良いプレイヤーと良いエンジニアが揃って初めて実現する「奇跡の音」を、今のこの時代に目指すのは、もしかしたらとんでもなくドン・キホーテな事かもしれない‥‥けど、僕には彼の気持ちが痛いほどわかった。