実相寺昭雄

 子供の頃、ウルトラマンが好きじゃなかった。でもウルトラセブンは大好きだった。理由は簡単。「マンは子供向けで、セブンは大人向けだったから」いや、今にして思うとそんなに単純な問題でもないんだけど‥‥当時の僕はそう感じていた。

 僕の心にクッキリ焼き付いている映像がある。とても生々しく濃密で、美しく、そして悲しい映像だ。ファンの間ではもはや伝説となっているので、ベタと言えばベタ過ぎるシーンなのだが‥‥

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 工場がひしめく町、ブルーカラーたちの住む町、機械の音が響く中、息苦しいほどの夕陽をバックに対峙するウルトラセブンとメトロン星人。彼らは戦う前、メトロンが住むアパートの一室で、ちゃぶ台を挟み、話し合いをした。笑ってしまうようなシチュエーションだ。だって宇宙人が畳の上であぐらをかいてるんだもん。しかし話の内容はいたってシリアス。「おまえはなぜ地球人のために戦うのか?」確かそんな会話だった気がする。

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 この、ヘタをするとコメディーになりかねない微妙な場面が、ローアングル、逆光、横顔で描かれている。記憶が定かではないが、B.G.M.にはクラシックが使われていた気がする。これこそがウルトラセブンの魅力を象徴する、まさに真骨頂であり、僕に実相寺昭雄という監督の存在を強く意識させた最初の衝撃だった。彼はセブンの他に「怪奇大作戦」など円谷作品を多く手掛け、映画「帝都物語」の監督としてもカルトな支持を集めている。またクラシック音楽への造詣の深さを活かし、オペラ(舞台)関係の仕事もなさっていたと聞く。

 その彼が亡くなった事をmixiのコミュニティーで知った。折しも新作「シルバー假面」が12月に封切られる事になっていて、先日行なわれた試写会にも列席。次作も決まっていたらしい。最期の最後まで精力的に創造を続けた実相寺さんのご冥福を心よりお祈りします。

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