季節はずれの歌

 昼間、仕事をしていると外から「きよしこの夜」の合唱が聞こえて来た。季節外れにもほどがあるこの歌がどこから聞こえて来たかはすぐに察しがついた。

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 僕の住んでるマンションの向かいの建物には「老人介護」の施設が入っていて、お年寄りたちが建物の前に並べられたイスに座り、声を揃えて歌を歌ったり、ゲームを楽しんだりする事がある。痴呆症の老人もいるらしく、突然意味不明の叫び声が聞こえて来たり、時には介護士らしき女性のヒステリックな声がコダマする事もある。

 僕の祖母も晩年痴呆症になった。失禁や徘徊。虚言や奇行と付き合う毎日。祖母の世話はもっぱら母がみていたが、母は美容師をしていたため、店に出ながらの介護はかなり大変で、当時高校生だった僕もたまに入浴の手伝いをした。ボケてしまうと言葉でのコミュニケーションが成り立たなくなる。当然ながらいくら口で注意しても祖母には伝わらない。わかってはいても「何度言ったらわかるのっ!」とついつい口調も荒くなる。だから介護士がヒステリックな声をあげてしまう気持ちも痛いほどわかる。
 わかってはいても、やっぱり人がヒステリックになってる姿って、あまり気分のいいものではないね。

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