そーとーのタヌキ

　うちのマンションの入り口に、見慣れぬ機械が置いてあった。何をするための物かわかんないけど、ロール状の壁紙らしき物が装着してあったから、きっとこのマンションのどこかで壁紙を張り替える作業でもやっているのだろう。

　僕の住んでるマンションは築30年ほどになるので風呂もトイレもかなり古風な装備で、誰かが引っ越して行って部屋が空くと壁紙の張り替えだけでなく、畳の部屋をフローリングに替え、風呂とトイレの改装工事が行なわれる。だから空き部屋が出るたびに「ガガガガガーっ！ ゴゴゴゴゴーっ！」と工事の音が鳴り響き、振動が伝わって来る。しかし空き部屋が出るたびにこの古い建物のあちこちの壁をぶち抜いたりしてて大丈夫なのか？ 改装工事は建物全体にダメージを与えていないのか？ 少なくともうちは雨漏りするんだぞ。壁や天井に何カ所もヒビが入ってるんだぞ。建物の土台部分は歯槽膿漏の歯茎のように痩せて行ってるんだぞ。

　近い将来確実に「東海大地震」が来るというのに、うちのマンションの耐震性は充分なのか？ ホントは自治体から大家さんに「耐震補強工事をするように」という通達が幾度となく届いているんじゃないのか？ 改装工事もいいが、その前に耐震工事をやってほしいぞ。近所のマンションはすでに軒並み補強工事を済ませているんだぞ。「そんなに心配なら引っ越せばいいじゃないか」という声が聞こえてきそうだが、僕はこのマンションが好きなんだよ。けど、あの大家はそーとーのタヌキだからな。一筋縄では行くまい‥‥。