記憶だけが頼り

先日、父を病院に連れて行った時に「いつか確認しておかなければ」と思っていた実家の土地権利書の在処を父に尋ねた。「非常持ち出し用の鞄に入れてある」というので、そのキャリーバッグを開けようと思ったらご丁寧に鍵がかけてあった。3ケタの数字を合わせて開ける鍵だ。一瞬イヤな予感がしたが「鍵の番号覚えてる?」と聞いたら、運よく覚えていて権利書の存在を確認することができた。危ない危ない。もし父がその数字を忘れていたら一苦労するところだった。

その時その時の「これが最善」に基づいて保管場所を決めたり、セキュリティーを強化するのはいいが、泥棒に取られる危険性より、何が何処にあるかがわからなくなったり、取り出せなくなるリスクの方が圧倒的に身近な問題だ。すべてにおいて「記憶だけが頼り」というのは、誠にスリリングな管理法と言わざるを得ない。

親の老化に伴い、息子である僕が様々な手続きをしなければならなくなった。そこで改めて感じたのは、自分に介護が必要になった時、あるいは自分が死んだ後に必要になるであろうアレコレをアッチやコッチに分散させず、身辺をなるべくシンプルにまとめておくことの重要性。預貯金の口座もできれば1つにまとめ、民間の保険と公的な保険、年金などに関する証書、印鑑や貴重品などを、第三者にも把握しやすい形で分類し、できるだけ1箇所に集約しておくことが大切だ。

コメント