面白いドキュメンタリーだった。いや、ドキュメンタリー作品として面白かったのも事実だけど、1969年のその日、東京大学の900番教室で起こった出来事自体が何より面白かった。何が起こっても不思議ではない一触即発の対決‥‥だったはずなのに、冒頭の挨拶で発せられた三島由紀夫の言葉と、彼の人柄がその場の空気を変えたように見えた。
まさに知性、信念、思想のぶつかり合い。残念ながら僕には彼らの主張が充分に理解できたとは言えないけれど、下手をすると刺されるかも知れない敵陣に乗り込み、自分を大きく見せようとも、相手を論破しようともせず、萎縮することも迎合することもなく、時にユーモアを交えながら、自分より20以上歳下の1000人の学生に対し、あくまで等身大の生身の人間として話し合おうとする三島由紀夫。そして互いに言葉をぶつけ合っていく中で、ある種のシンパシーやリスペクトを感じて行く双方の姿に思わずニンマリしてしまったが、どうしてもその後の顛末を重ねてしまうわけで、なんとも切ない気持ちになった。
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