チック・コリアが亡くなった。 高校の頃、ピアノ弾きの友人が彼の信奉者で随分聴かされた。当時の僕にとってチックの音楽は大人過ぎたけれど、一生懸命背伸びをして聴いた。友人オススメの「クリスタル・サイレンス」もいいけれど、僕はやっぱり「スペイン」が好き。
1970年代から80年代前半までのジャズ、フュージョン界を象徴するキーボーディストと言えば、僕にとってはハービー・ハンコック、チック・コリア、ジョー・ザヴィヌル、ジョージ・デュークの4人で、いずれもアコースティックとエレクトリックをブレンドする事に関してはパイオニア的存在だった。そして4人それぞれが個性を持っていた。奏法やフレージングだけでなく、特にシンセサイザーなどは1音聞いただけで「これはハービー」「これはチック」「これはジョー」「これはジョージ」とわかるほど独自の音色を持っていた。チック・コリアが他の3人と1番違っていた点を敢えて挙げるなら、ローズとの付き合い方だったように思う。ローズピアノはフェンダー社が作った電気ピアノで、とろけるような甘い音色を得意としているが、使い方によっては攻撃的な歪んだ音色にもなる。たぶん4人のキーボーディストの中で最もローズを愛し、ローズの可能性をとことん追求したのがチック・コリアだったように思う。
そういえば昔、トランペット吹きの友人がダビングしてくれた裏ビデオに、チック・コリアの「クリスタル・サイレンス」が BGM として使われていて、芸術性を追求する制作者の志の高さは感じたものの、画面に写る人々の行為が崇高な営みに見えてしまい、そのビデオ本来の役割を果たす事ができなかった‥‥という酸っぱい思い出をここに吐露しておきます。
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