ドカッタ

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 小学生の頃 担任が生徒たちに「お父さんの職業は何?」という質問をした。今はどうか知らないが あの頃はそれが普通の学校の風景だった。クラスの皆が順々に答えていき ある男子生徒が「ドカタ!」と誇らしげに答えた。僕はその時それがどんな職業なのかわからなかったが 担任が慌てて「あ 肉体労働をしてらっしゃるのね?」みたいなフォローを入れた。なるほど工事現場などで働く人を「ドカタ」と呼ぶんだな。とすぐに察したが その時の先生の反応には何とも言えない違和感を覚えた。

 それから何年かして「ドカタ」というのは漢字で「土方」と書くのだと知り「カッコいい言葉だなぁ」と思った。しかしそれと同時に「土方」が差別的な言葉であり 放送禁止にもなっている。という事実も知った。「土方」がいつ頃作られた言葉なのかは知らないが おそらくその言葉が作られた当時は そこに差別的な意味は含まれていなかったんじゃないかな? 言葉自体が差別的なのではなく 後の人々がそれを差別の道具に使っただけなんじゃないかな? たとえば「JAP」という言葉のように。

 あ でも たしか一昨年の紅白歌合戦では「ヨイトマケの唄」の中で 美輪明宏はちゃんと「働く土方のあの唄が」と歌っていたっけ。そういえば一昔前まではテレビで古い映画を観ていると 音声の一部が消されて放送される という事が度々あった。だから黒澤作品なんか「あ また聞こえなくなった!」だらけだったんだけど そういう時はたいてい「こじき」「めくら」「かたわ」「きちがい」「びっこ」「ちんば」「つんぼ」「おし」辺りの言葉が劇中で使われている場面だった。しかし今では「この作品には差別的な表現が含まれていますが オリジナルのまま放送いたします」みたいなテロップを付けて ノーカットで放送される事が多くなった。もちろん差別は良くない。絶対に良いはずがないのだけど 言葉にレッテルを貼って封印し「無かった事」にするのはもっと良くない事だと僕は思う。

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