AVATAR

 ジェイムズ・キャメロンの最新作「AVATAR」を観てきた。映画館という空間があまり得意ではない僕なので、DVD化を待とうかとも思ったんだけど‥‥何たってこれ3D作品なのでね。今うちにあるテレビ受像機ではこの作品が持つ本来の魅力を充分に味わえないのが悔しくてね。

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 一口に3Dと言っても、どうやらそのシステムにはいくつか種類があるらしく、映画館によって方式が違うんだってさ。とりあえず今回僕が観たのは「IMAX 3D」というシステムで上映された吹き替え版。同じ方式の字幕版を選ぶ事もできたけど、この映画はとにかく映像に集中したかったので吹き替え版にしてみた。

 3Dと言えば子供の頃「飛び出すマンガ」とか「飛び出す写真」みたいなもんを雑誌付録の青と赤のメガネで見た事があったし、東京ディズニーランドでマイケル・ジャクソンの「キャプテンEO」を観た時も確か専用のメガネを使った気がするけど、今回のはパッと見は普通のサングラス。光に透かしてみると左右で少し色合いが違うけど、それもわずかな違いで、さすがに青赤メガネより圧倒的に洗練された代物であった。

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 本編が始まってしばらくの間、メガネをかけたり外したりして見え方の違いを比べてみたんだけど、メガネを外した状態でもそれほどの違和感はなかった。ただ、スクリーンには右目用と左目用の映像がダブって投影されているわけで、少しボヤケたような、ピントが合ってないような、そんな映像ではあったけどね。

 映画の作りとしては「どうだ! 立体だぞ! 凄いだろ?」的なスケベ心は極力抑えられてて、そこには好感が持てた。でもこれは僕の思い込みかも知れないけど、序盤の何分かは「3Dならでは奥行き」を意識した構図と撮り方が強調されていた気がした。手前にある物、ちょっと先にある物、ずーっと向こうにある物、この3つの要素があからさまにブロック分けされてて、主題は常に「ちょっと先」に置かれていて、専門的な表現をするならば被写界深度が極端に浅い状態の画が続く。つまり手前と奥は常にボケていて中間部分にだけピントが合ってるような映像だ。しばらくするとその極端さは薄れ、より自然な遠近感へと収束して行った気がしたんだけど、もしかしたらこれは「3D」というものに僕の目と脳が順応するまでに、それだけの時間がかかっただけだったのかも知れないな。

 この映画は侵略する者とされる者を描いている。舞台は異星だし、相手は異星人ではあるけれど、そこに描かれているのは人類が過去に繰り返し犯してきた過ちの歴史でもあり、我々が今まさに直面している目の前の問題でもある。監督はインタヴューで肯定も否定もしなかったようだが、この作品は明らかに宮崎 駿の影響を受けている。敢えて作品を挙げるなら「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」あたりだろうか。設定や映像にも宮崎作品との共通点が数多く見て取れたし、根底に流れている精神みたいなもんが強烈に共振してる感じがビシビシ伝わってきた。「なるほど、キャメロンが撮ると、ハリウッドが作るとこうなるのか」僕はそんな事を思いながらこの作品を楽しんだ。たしかにこの作品は映画館の大きなスクリーンで、しかも3Dで観るのがベストかもしれない。でも普通に2Dで観ても、おそらく色褪せる事はないだろうな。そんな気がした。

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