Everything is Everything

 Everything Is Everythingを聴いている。大阪万博の開かれた年。僕が小学校に入学した年。1970年に発表されたダニー・ハサウェイのデビュー・アルバムだ。邦題は「新しきソウルの光と道」少々臭いが、今にして思うとなかなか良いタイトルかもしれない。ダニーの音楽は「ニューソウル」というカテゴリーに入る。同じ時代に活躍していたニューソウルのミュージシャンは他にスティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールドなど。そしてデビューしたてのアース・ウインド&ファイアーも他のミュージシャンに比べるとジャズ色とロック色が強いもののニューソウルにカテゴライズされていた。ニューソウルはそれまでの私小説的なソウルよりスケールが大きく知的で都会的だった。

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 特にダニーとアースの関係は深く、ダニーの名盤「LIVE」でドラムを叩いているのはアースのドラマー「フレッド・ホワイト」だし、今日聴いている「新しきソウルの光と道」でベースを弾いているのは後にアースのホーン・セクション「フェニックス・ホーンズ」にトロンボーン奏者として加わる「ルイス・サタフィールド」だったりする。さらにタイトル曲の「Voices Inside (Everything is Everything)」はアースの1971年のアルバム「The Need of Love」の中でカヴァーされているので、聴き比べてみると2倍楽しめる。

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 パーソネルを見ていて「?」と思った。アルバム最後の曲「TO BE YONG, GIFTED AND BLACK」でのダニーはピアノ、オルガン、エレクトリック・ピアノといろんな楽器弾きまくりの大活躍なんだけど、最後に見慣れぬ楽器名が記されている。「Fender piano bass」‥‥なんじゃこれ? フェンダーはギターやベースでおなじみのメーカーだが「ピアノ・ベース?」さっそく調べてみた。

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 ほほ~ぉ♪ こんな楽器があったんだぁ‥‥なるほどフェンダーはローズ・ピアノと言う電気ピアノの代名詞のようなキーボードも作っているが、きっとこれはそのローズの低音専用キーボードなんだな。もう一度念入りに曲を聞き返してみた。ええええええっ? 普通のエレクトリック・ベースにしか聞こえんぞ‥‥すっげぇ! 音色もさる事ながらそのフレージングが、装飾音に至るまで弦ベースそのものだ。驚異的だ。ダニーよアナタは凄い人だよ。

 考えてみるとニューソウルの巨人達にはなぜか暗い影がつきまとう。そして皮肉な事に彼らは悲劇によって伝説になった。マーヴィン・ゲイは「セクシャル・ヒーリング」の大ヒットによって復活したのも束の間、1984年、父親が放った弾丸に倒れ、ダニーは1979年、自らその命を絶ってしまった。せめてもの救いはダニーの娘レイラがヴォーカリストとして活躍している事かな。偉大な父親の存在はきっと想像以上のプレッシャーだろうけど、頑張ってね! って僕に応援されても嬉しかないと思うけど(笑)

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