スタートラインから見える風景

 今日、ある大学から「入学説明会」のパンフレットが送られてきた。ちょうど1年前、僕は通信制の大学に入学するつもりで何校かの大学からパンフレットを取り寄せ、比較検討をしていた。そしてその中から1校を選び、願書を送る直前のところまで行ったのだけど、事情があって入学を諦めざるを得なくなってしまった。しかし今でも「大学に行きたい」「勉強したい」という気持ちは持ち続けている。おそらく今日届いたパンフレットは昨年入学を見送った人を対象に送付されたものだろう。くすぶっていた心が小さな煙をあげ始めた。

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 僕は芸術系の大学を中退している。その事を後悔した事は1度もないのだが、歳をとるにつれ自分の弱点が浮き彫りになる事もあれば、限界を感じる事もある。もしかしたら僕は至極当然の事を理解しないまま仕事してやしないか? 狭い世界で染みついた常識に捕われてやしないか? 自分の作品を胸を張って人に説明できるか? 何にワクワクし何にゲッソリするかを自覚しているか?‥‥それらの問題が大学に入る事ですべて解決する。などとは思っていない。が、スタートラインから見える風景をもう一度見てみたいような気がしている。

ただいま回転中のレコード
TUTU / Miles Davis
帝王マイルスの1986年の作品。プロデュースはトミー・リピューマとマーカス・ミラー。僕はマイルスのアルバムの中ではこれが1番好きだ。独特のニヒリズムとでも言えばいいのか、とにかくクールでカッコいい。ちょうどこのアルバムが発売になった頃、マイルスは夏の野外ジャズ・フェスに出演するため毎年のように来日していて、僕はその度に観に行った。ステージ中を歩き回りながら地面目がけてトランペットを吹くマイルス。他のメンバー達はマイルスの一挙手一投足から目を離さず、ピリピリした空気の中スリリングなステージが展開された。あれから数年して彼は亡くなってしまったが、今となっては彼と同じ空間であのスリルを体験できた事は僕の大切な財産だ。もうひとつ付け加えさせていただきたい。このアルバムはアートワークが尋常じゃないほどイカしてる。アーヴィング・ペンのゾクゾクするようなモノクロ写真と、石岡瑛子のジェラシーなくしては見る事ができないほどカッコ良すぎるアート・ディレクションが冴えまくっている。もしこのアルバムを買おうとお思いの方がいらしたら、ぜひレコードでお買いになる事をお薦めする。あのサイズでなければこのアートワークは堪能できないのだ! なんなら中古レコードでもいい。盤に傷が入っていてもいい。聴く用のCDを別に買えばいいのだから。

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